「槙野だったら、何味にする?」
二月。今年も例年と変わらず、雪がよく降った。今年は雪が降っても、ヤヨちゃんはかき氷の話をしなかった。去年のことなんて、ヤヨちゃんの中からすっかり消えてしまっているのかもしれない。

あれから、僕は僕のことを、よく考えるようになった。まずは自分自身が「どう」生きたいのかってこと。答えはもちろん出ていないし、もちろんヤヨちゃんのことが大好きなままで、スカートの下にはジャージも履き続けている。
これに関してはやめられそうにない。生足なんてちょっと恥ずかしいし、それに相当寒いと思う。夏でも冬でもジャージを履き続けた僕だ。夏でも我慢出来ていたのに、冬に生足なんてきっと凍死する。

ヤヨちゃんは僕を見るたびにズルいって言いながら、じゃあヤヨちゃんも履けばって勧めると、それは嫌って言い張った。やっぱりヤヨちゃんは「女の子」だと思った。

僕達三人の関係性は変わらずに、涼太は今もヤヨちゃんを家まで送って行くし、僕は窓の外に小さくなっていく二人の後ろ姿を、教室の窓から見下ろした。
前よりはかなしくない。何かを隠し続けることがどれだけ自分を苦しめていたか、思い知った。
少しだけ、僕は「本当」に近づけた気がした。
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