一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
11、兄夫婦の優しさに触れて
「お帰り、雪乃」
高速バスを降りると兄がいた。
清涼感のある黒のショートヘアでメガネをかけている兄の海は、黒のデニムに水色のシャツ、上には紺のパーカーとシンプルながらもお洒落だ。
朝の六時半。
普通なら上下ジャージとか部屋着で来そうなものだが、わざわざ着替えてくれたのか。
「ただいま。雨の中迎えに来てくれてありがとう」
礼を言う私を傘に入れると、兄は私の手からバッグを奪って歩き出す。
「行こう。こっちだ」
「あっ、ありがとう」
数十メートル先にある駐車場には白い軽自動車が停まっている。兄の車だ。
車の中で待っていてもよかったのに、どれくらい外で私を待っていたのだろう。
今日から四月に入ったとはいえ、コートなしでは寒くて身体が震える。
車の助手席に座ってシートベルトを閉めると、私の荷物を後部座席に置いていた兄も運転手に座った。
「痩せたな。ちゃんと食べてるのか?」
祖母の葬式の時より体重が三キロ落ちている。


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