暴君王子の恋の瞳に、私は映らない
好きの追いだし方
その日の帰りも、いつも通りだった。
鞭光君と並んで、校門を出て
お母さんと鞭光君の親友ジョー君の
お墓に寄って。
「グミの親友、態度デカいな」
「菜緒ちゃんのこと?
鞭光君が、それを言うんだ。フフフ」
冗談を言い合いながら
お互いツッコみ、ツッコまれ
アハハと笑い声をあげ
長い石段を登り切り
幸せ気分に浸るも
あっという間に私の家に到着。
『もっと一緒にいたいな』
私の心の中には、素直な言葉が浮かんでいる。
本物の彼女だったら
甘えてもいいのかもしれない。
でも私は、ただの『嘘カノ』
「送ってくれてありがとう」
彼に嫌われないように
とびきりの笑顔を作って
「また明日ね。
むちみつ君、バイバイ」
手を振ることしかできないんだ。