暴君王子の恋の瞳に、私は映らない
☆つぐみside☆
☆つぐみside☆
なんで私……
むちみつ君の部屋にいるんだろう……
お姉さんの楓さんに
ワンピースを返したら
お母さんに
会いに行くはずだったのに……
バックの中に潜ませている
太めのカッターナイフ。
楓さんにバレたくなくて、
私は、壁の隅にしゃがみ込み
カバンを、部屋の隅の隅に押し込む。
「つぐみちゃん、
手伝わせてごめんね~」
悪いことをしている気がして
「いっ……、いぇ……」
裏返り声と一緒に
体ごと飛びあがってしまった。
「生意気な弟のために、
この部屋を
飾らなきゃいけないからさ~」
いろんな色の細紙が、輪になって繋がった
長い長い輪飾りを
私に持たせた楓さんは
その先端を引っ張りながら、
せっせ、せっせと
壁にテープでとめていく。
むちみつ君の部屋は、赤と黒基調の
ワイルド男子っぽいカッコいいお部屋。
それなのに
どんどん、幼稚園のお遊戯会チックに
染められていくのは
波のように飾られた、
色とりどりの輪飾りのせい。