極上御曹司は懐妊秘書を娶りたい
貴方なしではいられなくなる魔法
 そして、そのパーティーから約一ヶ月が経過した今日、――――私は妊娠検査薬を手に、自宅で一人項垂れていた。
 元々、何となく調子が上がらないなとは思っていたのだ。身体の気怠さや微熱が続き、恵美子さんはもちろん、城阪社長にまで毎日「体調は大丈夫か」と心配されるほどだった。それに加えて、予定日を過ぎても月の物がやってこない。それでまさかと思い、検査薬を使ってみたのだけれど、――――
「……本当に、妊娠してたなんて」
 心当たりはあのパーティーの夜しかない。きちんと避妊具は付けていてくれたように思うけれど、最後のほうは二人の身体の境目が曖昧になるほどに溶け合っていたから、記憶も朧気だ。
 どれだけ避妊がしっかりしていたって絶対はない。他に心当たりが微塵もない以上、このお腹の中にいるのはどう考えても城阪社長の子どもだろう。
「どう、しよう……どうしたらいいんだろう」
 嫌な音を立て続ける心臓が痛い。きつく目を瞑り、私は自分の心の内側へと意識を向けた。
 どうしたらいいのかは分からない。分からないけれど、最初の衝撃が過ぎ去れば、自分がどうしたいのかを探るだけの余裕は出てきた。心を落ち着けるために深く呼吸をしながら、感情の一つ一つを解きほぐしていく。
 最初に浮かんできたのは『嫌じゃない』という感情だった。倫理も世間体も何もかも無視したとき、私は別に彼の子どもを身ごもったことが『嫌じゃない』のだ。一生叶わない想いを抱き続けるより、このお腹の子を支えにして生きていくほうが、ずっと幸せなように思えた。産みたいか、産みたくないかで言えば、――――たぶん、産んでみたいのだと思う。
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