怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
憧れではなく恋だった



 *

 それから数日が経った土曜日。

 今日も悠正さんは仕事のようでスーツを着て朝早くから出掛けて行った。けれど、本当かどうかわからない。もしかしたら、元恋人の女性と会っているのでは? そう疑ってしまう自分が嫌だった。

 悠正さんとはあれからまともに口を聞いていない。今度は私が彼を避けている状態だ。

 同じ家に住んでいるので、おはようやおやすみ、ただいまやおかえり、と必要最低限の挨拶は交わしているもののそこから会話が広がらない。

 そんな生活が苦しく感じるようになり、ふと思い浮かんだのは実家のことだった。しばらくの間だけ帰ろうかな……。そう思ったけれど、母のことを思うとためらってしまう。

 悠正さんとの関係が気まずくなったから実家に戻った。正直にそう告げたら、きっと母を心配させてしまう。ようやく過度な束縛から解放されて自由になれたのに逆戻りになってしまいそうだ。

 そこまで考えてふと気が付く。そういえば最近、母からの電話がかかってこない。

 悠正さんと結婚したばかりの頃は毎日のように掛かってきた電話も、いつの日からか三日に一回、週に一回と徐々に回数が減っていき、今ではもう最後に母と会話をしたのがいつなのかも思い出せずにいる。

 母に、なにかあったのだろうか……。

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