それは夕立とともに

これは雨宿りではなく



「っわ、冷てっ!」

 ガラス扉を開けた途端、大粒の雨が頭や肩へと降り落ちてきた。

 空を見上げて眉根を寄せた。仕方なくガラス張りの直方体に後退りする。

 ザァアと音を立てて降り出した雨は、次第に乾いた地面を黒く染め上げていく。

 夏用の制服が濡れるのはひとまず回避したが、まだ帰宅途中なのだ。まさかこんなところで足止めを食うとは。

「いきなりの大雨とか……」

 ーー最悪じゃん。この様子じゃ当分帰れそうにないし。

 時間帯と雨量から考えると夏の風物詩である夕立に違いない。たとえ傘を持っていたとしても、下半身がずぶ濡れになる振り方だ。

 地面に溜まった水に無数の波紋が作られ、その飛沫が狂ったようにガラス壁へと跳ね返ってくる。

 外へ出たらもれなく滝行ができそうだ。

 電話ボックスの外に広がる白い光景を見つめ、肺の底から大きな息を吐き出した。それまで肩に掛けていたスクールバッグを地面に下ろす。

 ガラッとすぐそばで音が鳴り、俺は大袈裟に肩を揺らした。

 ーーっえ!

 扉を開けたのは、意外な相手だった。彼女を見つめ、暫し呆然とする。

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