花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
五章

目覚めた瞬間、凍りついたのは始めてだった。

エミリーが寝返りの打ちづらさを感じて目を開ければ、眼前にはレオンの美しい寝顔。

彼はブランケットの上に横たわっていて、一つのベッドで一緒に眠っていた状態に思わず絶叫しそうになる。

窓へ目を向けると空は夕暮れ色に染まっていて、どうしてこんな状況にとエミリーは記憶を辿る。

レオンに膝枕をしてもらいながら彼が王子だった事実に撃沈した後、アデルが用意してくれたお菓子を食べてなんとか気持ちを立て直す。

しかし、レオンが絵本に気づいて、なぜか読んでもらう流れに。

膝の上に座らせてもらって、十七才の彼に絵本を読んでもらう(中身が)十六才の自分。

三歳児を装ってはしゃぐのもさすがに虚しくなり、エミリーは途中からずっと遠い目をしていた。

虚無の心で優しい声に耳を傾けているうちに眠くなってきて……それからの記憶が途切れているため、どうやら眠ってしまったらしい。

現状から判断するに、眠ってしまったエミリーをレオンが部屋のベッドまで運び、彼も長旅の疲れで眠りに落ちてしまったのだろう。

レオンの首元できらりと光ったものに、エミリーは再びドキリと鼓動を高鳴らせる。

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