「私がどうしようもなく雅を好きになっちゃったから。好きで好きでどうしようもなかったから、言えなかった。」
自分以外の誰かの幸せを願うことなんて今まで正直できなかった。
無条件に、誰かの未来の幸せを優先したいと思ったことなんてなかった。

「言っただろ?離婚届のこと。」
「・・・」
「あれは晶からの俺へのラブレターだと思った。きっと俺を想って離れようとしているんだって確信を持ってた。だからこそ、そばで支えられない自分が不甲斐なかったし、そこまで想ってもらう資格がないって思った。」
雅がニューヨークの病院で努力していたのは、自分の為だけじゃない。きっと私の為でもあったと今は思う。だからこそ、雅は私との時間を作れなかった自分を責めているけれど、不思議と今になると、ニューヨークの家で一人でいた時間も、あたたかな気持ちになれる。
「これからはちゃんと言葉にする。思ったこと、感じたこと。うまく言えないかもしれないし、時々無神経なこと言っちゃうかもしれないけど。言葉にして、晶に聞いてほしい。それにそばにいる。隣に居る。だから、晶にも言ってほしい。言葉を飲み込まずに、晶の言葉を聞きたい。これからつらいこととか苦しいこととか、マイナスなこともあるかもしれないけど、それでも。」
雅の言葉に頷く。
「約束。」
私の目の前に出す大きな雅の手。私たちは小指を絡めて、約束をした。
雅の手からしたら、私の手は子供の手のように小さく感じる。

この力強く大きな手に、私は頼もしさを感じた。