愛してしまったので離婚してください
穏やかな日々
「検査結果を見て、妊娠していない状況だったらすぐにオペをした。でも、妊娠中に腹直筋のオペをすることは何らかの影響を胎児にも与えてしまうか、流産や早産、最悪オペ中に命を落とす可能性もある。それだけじゃない、危惧すべきは晶自身の体のこともある。大量出血を起こす可能性も、ありとあらゆるリスクが一気に妊娠していることによって高まるんだ。」
雅は私の手を握ったまま話を続けてくれる。

「腫瘍はもしかしたら転移する可能性もある。もしかしたら俺が見つけられないだけで、転移しているかもしれない。正直、焦った。はじめは。でも、ここにいるチームの先生たちの冷静な判断で、胎児がもしも出産になったとしても生きられる可能性が上がる週数になるまで、腫瘍の状態に注意をして、なんとか持たせようって判断したんだ。」
この一週間。雅はチームの力をあげるための実践だけじゃなく、私の体のことをこのチームで話し合ってくれていたんだと思うと、ありがたさと申しわせなさも感じる。

それなのに、雅は私の前ではつらそうな顔も、疲れた顔すら見せなかった。
いつだって穏やかに私を支えて、微笑みかけてくれていた。

体だけじゃない。きっと心もつらかっただろうなと、私は自分の体の状態よりも雅のことを考えていた。
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