真っ先に目に入ったのは、おどろおどろしい紫色の空に浮かぶ、毒りんごのような深紅の月。
仄暗い室内を、稲光が照らす。
特に天気が悪いわけでもないのに雷鳴が聞こえてくるのは、いつものことだ。
ひと月ぶりに入った、魔王城のダイニングルーム。
大きな窓から見える風景は、変わらず陰気なものだった。
つまらないと思う。
だけど、そんなことはどうだっていい。
それよりももっと大事なことが、これから始まるのだから。
とめどなくあふれ出る期待を制するように、唇を舐める。
ベルは案内されるがまま、六番目の席へ腰掛けた。