半地下牢の天井近くにある窓には鉄格子が()め込まれていて、月明かりが差し込むと歪な模様を床に描き出した。

「なんてことだ……!」

 鉄格子の向こう側では、傲慢(ごうまん)の兄・ルシフェルが、イライラと頭を掻きむしりながら歩き回っている。

 常日頃から見下している(マモン)にお気に入りの(ベル)を害されて、不愉快なのだろう。

 普段の飄々(ひょうひょう)とした態度が崩れかかっている。

 撫で付けた前髪がハラリと落ちている様は目を見張るほど美しいが、憤怒の兄・サタン以上に怒りをあらわにしている目は、ベルの胸を(ざわ)つかせた。

 同じところを何度も往復する姿は、檻に入れられた鋼熊(スチールベア)みたいだ。