手洗いうがい、よし。

 エプロン、よし。

 広いキッチンなのに肩が触れ合いそうなくらいの距離に二人並んで、ベルとケイトは作業台の上をじっと見つめる。

 そこには、未確認生命体を思わせるグロテスクな灰色のトウモロコシ──ウイトラコチェ十本分の実が置かれていた。

「ウイトラコチェといえば、煮込んでタコスの具にしたり、スープに仕立てたりするのが一般的だ」

 ウイトラコチェの実を一粒つまみ上げて、ケイトは言った。

「タコスとスープ……」

 ベルは、タコスというものを食べたことはないが、知識としては知っている。

 石灰水処理したトウモロコシをすり潰して作る『トルティーヤ』という皮に、具を挟んで食べるもの、だったはずだ。