その日、ようやくいつものようにと言えるようになってきたゴミ溜めの森散策に勤しんでいたベルのもとへ、ある魔族が訪ねてきた。
彼女とよく似た紫光りする黒髪を撫でつけ、冷徹そうな切れ長の目を持つ魔族は──、
「お兄様⁉︎」
傲慢の兄、ルシフェルである。
黒く大きな翼をしまいながら、彼はフワリとベルの前へ降り立った。
「久しぶりだな、ベル。元気に追放生活を満喫しているか?」
鋭い目が緩むと、穏やかな雰囲気が漂う。
お気に入りの妹だけに見せる特別な表情に、ベルはニッコリと微笑み返しながら、
「もちろん!」
と、答えた。