ルシフェルはたっぷり間を取った後、深々とため息を吐いた。
チラリと見てきた目には、呆れの色しかない。
「ごめんなさい、おにいさま」
テヘッと気の抜ける顔で笑いながら、ペロッと舌を出す。
ルシフェルの眉間に皺が寄った。
「悪いなんて思っていないだろう」
「そんなことない。ちょっとくらいは、わるいとおもっているのよ」
「……そうか。ならば俺は、かわいい妹がいつでも戻ってこられるように、準備をしておくとしよう」
「ありがとう、おにいさま」
「気をつけていけ」
「はい! いってきます、おにいさま」
伸ばされた手に、ぎゅっと抱きつく。
鉄格子越しの抱擁は、いつもと違ってちょっとだけ苦しかった。