「……⁉︎」

 一瞬にして、ザアッと血の気が引いていく。

 絶対的な存在を前にして、ケイトの歯はカチカチと震えた。

 それをなんとか食いしばって堪えながら、逸らしたくなる視線を前に据える。

 魔王だと思った。

 しかし、そこにいたのは数カ月前に対峙(たいじ)した魔王……ではなく、彼を若くして生意気にしたような男で。理解した瞬間、「なんだ……」と一気に気が抜けた。

 しっかり撫でつけられた黒髪と、魔族特有の白い肌。冷酷そうな目は、人を人とも思っていない、おとぎ話で読んだ吸血鬼のようだ。

 警戒し、釣り竿を握る手にギュッと力を込めるケイトに、男はすまし顔で、

「イカくらいでベルは満足しないぞ? 不勉強な男だな、まったく」

 と、鼻で笑った。