密会場所に選んだのは、ベルが持っている屋敷の一つだった。
理由は単純で、所有している屋敷の中で魔王城に一番近いのがそこだったからに過ぎない。
一階にある、人の国のサンルームを模したガラス張りの部屋──ベルはムーンルームと呼んでいる──で、ベルはお茶を淹れていた。
このお茶会の招待客は、二人。
勇者とともに戦った仲間、魔法使いのケイオンと戦士のボルグである。
レティはケイオンだけを招くつもりだったようだが、うっかり話を聞かれて用心棒としてボルグまでついてくることになったらしい。
この件については、ベルも悪い。
怒りに任せて、眠気マックスのレティを酷使してしまった彼女にも、一端はある。