ゴミ溜めの森へ追放されてから、五日が過ぎた。
森の珍味をいくつか食し、今も幼女らしい体格ではあるものの、舌足らずが改善されたのは幸いだ。
初日に拾った勇者のことを、ベルはまだ、レティに言えないでいる。
小心者の彼女が知れば騒ぎ立てるのが目に見えていたし、恋の話に飢えている彼女がどんな勘違いをするのかわかったものではなかったからだ。
「勇者と魔王の娘の禁断の恋……! とか言って目をキラキラさせそうだもの」
見る限り、勇者は成人男性である。そして、対するベルは幼女。
レティはベルの本来の姿を知っているからキャーキャーできるかもしれないが、実際に勇者が今のベルに恋をしたら犯罪である。人の国はもちろん、地の国でだってあり得ない。
脳裏に浮かぶ鬱陶しいレティを追い払うように、ベルはぞんざいに手を振った。