勇者の話をひととおり聞かせてもらったベルは、看病疲れが一気にきたような疲労感を覚えていた。

「原因は、お姉様だったのね……」

 やはりというか、なんというか。

 勇者の話はかなりぼかされていたが、彼が逃げた原因は、間違いなく姉である。

 どこまでもブレない姉に、ある種の憧れにも似た気持ちと、またか、いい加減にしろという怒りが混じり合う。

 モヤモヤとした気持ちを吐き出すように、ベルは深いため息を吐いた。

 色欲姫である姉のアスモは、自分の欲に忠実で、魔王以外の他者を一切気にかけない。

 彼女に選ばれた、恋人という名の生贄(いけにえ)が笑っていられるのは、最初だけ。

 最後は精も魂も尽き果てて、逃げ出してきたところを厨房で盗み食いしていたベルに見つかり、助けを求めるのが、お決まりのパターンとなっていた。