「お世辞じゃないなら、アレがいけなかったのかしら?」

「アレとは?」

 言うべきか、悩む。

 アレは、地の国でも良く思われていない。人の国では、なおさらだろう。

 わずかに逡巡(しゅんじゅん)して、でももう遅いか、とベルは開き直ることにした。

 だって、飲んでしまったあとなのだ。取り返しは、もうつかない。

「タガメ酒よ」

「タガメって、水中昆虫の?」

「そう。地の国に生息しているタガメは人の国に生息しているものよりも強い香りを持っていて、特に、繁殖期のオスのフェロモンはフルーティーな芳香がするの」