「すぐに動かなければならない差し迫った場合に動くのは、」
「それは、例外」
ベルが答えると同時に、ケイトが動く。
大きな危険を感じなかったので、ベルは彼に任せることにした。
飛び出していった彼は、低木の中へむんずと手を突っ込み、そして引き摺り出した。
フワフワの毛玉が、ケイトの腕の中へおさまる。
こんがり焼いた、きつね色の毛。十キロ程度の丸い体に、長い耳。
地の国には存在しない、いかにも無害そうで食べがいがありそうな生き物のその名は──、
「フレミッシュジャイアント。大型のウサギだ」
「ウサギ。これが……!」
ケイトの腕に抱かれ、忙しなく鼻をヒクヒクさせているのは、角がない生き物だった。
生まれて初めて見たウサギに、ベルは目を輝かせた。