ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~
 新條は係なんて引き受けられないくらい、売れっ子で忙しいはずだよ。アイドル時代の私は多忙で学校すらまともに通えなかった。今の新條なら全盛期の私と同じぐらい……、いやもしかするとそれ以上の仕事量かもしれない。一体どうして、引き受けたのよーっ?
 
 そう律は不思議に思いながら壁にへばりつくように移動し、新條から一番離れた席に着く。

 新條と話している男子の中の一人が、

「あっちゃん大変だな」

 と話しかけた。あっちゃん、というのは新條のあだ名だろう。おそらく、下の名前がアサヒだからあっちゃんなのだと思われる。

「急遽校長先生から頼まれるなんてさー。君がダンス係になってくれると周りの生徒の良いお手本になるでしょう、とかなんとか言われたんだろ?」

「そーなんだよ、参ったぜ。ドラマの撮影で忙しいってのによぉ」

 そういうことか。校長先生、なんて余計なことをしてくれたのだろう、と思い律は「はぁ……」とため息をつく。

 けれど今の一番の問題は、これだけ近くにいたら新條に正体がバレるかもしれないということだ。熱愛報道以来、こんな至近距離にいたことがなかった。

 『転校して新條を追ってきたストーカー』

 皆に正体がバレて、そんなレッテルを貼られてしまっては洒落にならない。

 落ち着け、私。近くにいるからってバレると決まったわけじゃない。だって転校してきて約一か月、クラスの誰にもバレてないでしょ。大丈夫だよ。

 律はそう自分に語りかけ、深呼吸する。

 男子は新條にニヤついた顔を向けた。
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