すると、朝靄の向こうからのんびりした声が響いた。

「あら、ユーリ様。10周で音を上げてしまうなんて。意外とスタミナがないんですのね」

 わずかに風が吹いて、朝靄の向こうの姿が明らかになる。

 一人目はノエル家から送られてきた侍女、アーニャ。一緒に走っていた先導者だ。いつもと違ってポニーテールにしているため、より快活な印象になっている。

 そしてもう一人。ガーデンテーブルに座り、優雅にティーカップを持ち上げるのはマージェリーだ。ふわりとかぐわしい紅茶を一口嗜んでから、彼女はにっこりと微笑んだ。

「ノエル家流トレーニングは、まだ始まったばかりですのよ?」

 かちん、と。彼――ユリウスは頭にくる。額の汗をぐいと拭い、ユリウスはびしりと指をさした。

「早朝に王を走らせておいて、一人ティータイムな君にだけは言われたくないぞ、マージェリー・デュ・ノエル!」

「おほほほほ」

 怒る王に、マージェリーは淑やかに微笑んだのだった。