ふくぁ、と。ユリウス王は欠伸を噛み殺す。
時刻は穏やかな日差しが照りつける昼過ぎ。たしかに眠気を誘いやすい時間帯ではあるが、彼が欠伸をするのは珍しい。
「いかがなさいましたか」
ちょうど書類を届けにきたジョルダン宰相が、王の様子に目敏く気づいて声を掛けた。
「お疲れでしたら、ご署名は後で問題ありませんが」
「いや。いま済ましてしまおう」
こめかみを揉んでから、王は書類に羽ペンを滑らせる。見事な達筆でサインを入れながら、ユリウスは深く考えずに続けた。
「体調が悪いわけじゃない。少し寝不足なのと、筋肉痛なだけで」
「筋肉痛とは珍しい。陛下は日頃から鍛えておいでなのに」
「私もそう思っていたんだが、鍛え方が甘かったらしい」