目を白黒させるフローラの耳に顔を寄せる。びくりと驚く彼女に、マージェリーはそっと囁いた。
「お気をつけください。フローラ様は、少々目立ってしまったようですわ」
悪口を言っていた一団にちらりと視線をやれば、フローラが不安そうに顔を曇らせる。そんな彼女を安心させるように、マージェリーはひらりと手に胸を当てた。
「大丈夫。私がそばにいれば、誰も易々と手を出せませんわ。ですからフローラ様。私とお友達になってくださいな。快適な学院生活を保証いたしますわよ?」
悪徳商法のような誘い文句だが、本人は至って真面目だ。なにせ将来の明暗が賭かっている。
主人公の親友ポジションの確保。これが、マージェリーが瞬時に打ち立てた作戦だ。
フローラを虐めない。それは大前提。
けれども不干渉を貫き接触しない。これでは不十分だ。
『ノエル家令嬢』『宰相の娘』といったステータスから、入学前からマージェリーとセルジュの婚約は噂されてきた。
フローラが誰かに虐められれば、まっさきにマージェリーが疑われてしまう。ならば逆張りに、犯人と疑われないほど仲良くなるしかない。