うららかな午後のお茶会から小一時間も経たないうちに、事件は起きた。

 セルジュと別れ、夕方の講義に向かおうとしたとき。フローラが「あ!」と慌てた表情をした。

「申し訳ありません、マージェリー様。お茶会の席に、ハンカチを置いてきてしまいました」

「あら。取りに戻りますか?」

 お茶会の席に置いてきたのなら、片付け中のアーニャが拾ってくれるはずだ。そう思って尋ねると、フローラは少し迷ってから頷いた。

「そうします。セルジュ様にいただいた大事なものなので。マージェリー様は先に……」

「いえ、ご一緒しますわ。講義が始まるまでまだ余裕がありますし」

 にこやかに微笑んで、来た道を戻る。夕方の授業はマダム・エルザのマナーレッスン。中庭に戻ってから再び向かっても、十分間に合う計算だ。