ユリウスが、脱兎の如く逃げ出した。



「えええええ!?」

 頓狂な悲鳴をあげている間にも、王の背中はみるみる遠ざかっていく。呆気に取られて見守っていたマージェリーだが、はっと我に返るとフローラを振り返った。

「申し訳ありません。夕刻の講座、少々遅れて参ります。先生にその旨お伝えいただけます?」

「え、ええ? マージェリー様はどこへ?」

「私は陛下をとっちめて参ります!」

 ええええ!?と。フローラの悲鳴を後ろに聞きながら、マージェリーはむんずとスカートの裾を掴む。幸いユリウスの背中は見えている。追いつけない距離じゃない。

 ダッと、マージェリーが地面を蹴る。

 こうして、追いかけっこのゴングが鳴った。