ロワーレ城を行きかう人々は、目にした光景に一様に目を丸くした。

 後ろを振り返らず、全速力で逃げる美貌のオオカミ王。それだけでも驚きなのに、王の後ろをぴたりと追いかけるのは、麗しき令嬢マージュリー・デュ・ノエルだ。

「陛下!! ユリウス陛下!!」

「お待ちください、陛下!!」

「待って! お待ちくださいってば!!」

「ユーリーウースーさーまー!!」

 ドレスの裾を摘まみ上げ、忍者のように駆けるマージェリー。深遠な蒼の瞳は、前を行く背中をスナイパーの如く見据えている。こんなに激しく動いているのに、銀糸のような髪が少しも乱れていないのは、さすがとした言いようがない。