「行くぞ、セルジュ。淑女を待たせるのは男の恥だ」
「は、はい!」
名前を呼ばれたからだろう。セルジュが驚愕に目を丸くする。
一瞬ぽかんと呆けたセルジュだったが、みるみるうちに顔を輝かせると、さっさと歩き始めた兄の背中を追いかけた。
「はい、兄上! 私も、お腹がぺこぺこです!」
「それはよかったな。さっさと座れ」
嬉しそうに隣に並ぶセルジュと、それをそっけなくあしらうユリウス。けれども、彼の態度が単なる照れ隠しであるのは、微かに赤くなった耳を見れば明白である。
それはまるで、もとから仲の良い兄弟のようで。
「ね? 大丈夫そうですよね?」
こそっと、フローラがマージェリーに囁く。
楽しいピクニックは、まだ始まったばかりである。