――そうして今、マージェリーはさーっと顔から血の気を引かせていた。

「ようやくお目覚めか。随分と待ちくたびれたぞ」

 耳に深く響く、ぞくりと色気をはらんだ声。

 蠱惑的な眼差しが、愉快気に自分を眺めている。

 夜の帳を下ろした空のような艶やかな漆黒の髪と、その下から覗く鮮血のような赤い瞳。

 すっと通った鼻筋に細面の顔と、どこか中性的な美しさを漂わせながらも、緩く纏ったローブから覗く身体は間違いなく男性で、どうしようもなく色気を醸し出している。

 それだけでも目を覆いたくなるというのに、男はさらに絶望を突き付けてくる。

「王の隣で熟睡とは、なかなか見どころのある娘だな。さすが、この私と一晩を共にしただけはある」

 一晩、だと。あまりの事実に、マージェリーは卒倒しそうになる。

 男がほのめかした内容がわからないほど、初心ではない。加えて彼はなんといっただろうか。王の隣。よもやそれは、聞き間違いであってはくれないだろうか。