「……腕に、当たっているんだが」

「…………」

 ――数秒後。手の形に赤く腫れた頬のまま、ユリウスはこほんと咳払いする。

「っ、それで、私が彼女と出会ったときの話だな」

(兄上を叩いた……)

(叩いた……)

 フローラとセルジュが、内心で同時にツッコミをいれる。ちなみに手型をつけた犯人、マージェリーは、顔を赤くして憤慨したままそっぽを向いている。

 もう一度こほんと咳払いをしてから、ユリウスは切長の目でゆっくり瞬きし、語り始めた。

「学院の卒業式の夜。偶然、彼女と二人きりで話す機会があった。長く話したわけじゃない。多くを聞いたわけでもない。――だが、彼女の言葉に私は救われた。それがきっかけだ」

「……え?」