――いいや。どうあがいても、目の前の絶望から目を逸らすことは出来ない。

 絡めとるような美貌に、覇者の風格の漂う眼差し。なんといっても、ルグラン王家の、それも選ばれた一部の王族のみが持って生まれる艶やかな漆黒の髪。決して見間違いようのない、目の前の男の正体は。

「ユリウス・ルイ・ルグラン陛下……」

 呆然と名を呼ぶと、聖ルグラン王国の若き王は、満足げに微笑む。

 セルジュ王子の異母兄であり、小説の登場人物のひとり。通称、ルグランのオオカミ王。

 彼こそが、マージェリーがとっくの昔に遠くに蹴り飛ばしたはずの、もうひとつの破滅フラグである。