「仕方ありませんわね。ほら、また風で飛ばされますわよ! 走って、走って」

「は、はい〜っ」

 ――そんなことを繰り返していたからか。いつの間にか二人とも森の中に入ってしまっていた。といっても、木々の向こうにはうっすら鏡池がみえている。戻ろうとすれば、すぐに帰れる距離。

 そこでようやく帽子を捕まえたフローラは、ほっとしたように肩を落とした。

「やっと捕まえました……! すみません、マージェリー様。あちこち走らせちゃって」

「こんなの走ったうちに入りませんわ。それより池に戻りましょう。私たちがいなくなったと、陛下たちを驚かせてしまうかもしれませんし」

 笑って足を踏み出そうとしたところで、マージェリーははたと立ち止まった。

 慌てて振り返るが、あるのは静謐な森の木々だけ。聞き間違えだろうか。念のため耳を凝らしていると、フローラが首を傾げた。