オオカミ王の姿を取っている間、ユリウスの魔力、身体能力は共にあがる。特に聴力、および第六感とも言うべき空間感知能力は飛躍的に向上する。

 黒い耳を立て、彼は感覚を研ぎ澄ました。

 風が葉を揺らす音に誘われて、森の輪郭が徐々に浮かび上がる。ちゃぽりと魚が水を跳ねる音、さわさわと擦れる草。連れてきた馬が落ち着きなく地面を蹴る音、木々の間を駆ける疾風。

 パキリ、と。勢いよく踏み出した足が、細い小枝を二つに割る音。

『お嬢様! こちらです。こちらに早く!!』

『わーーっ!? さっきより魔獣が増えてますー!』

『なんで!? なんでこんなところに魔獣がいるのよ!』

 慌ただしく駆ける3人の少女と、その後を追いかける荒い息遣い。獲物を追いかける興奮に呼吸を乱すソレらは、獰猛な牙をチラつかせ、木々の間を縫うように走る。