「くっ!」
振り向きざまにアーニャが小刀を放つ。まっすぐに飛んだそれは、先頭の魔獣の鼻面にクリーンヒット。だが、倒れたそれを飛び越えて、新たな魔獣がマージェリーたちを追う。
「ちっ! 次々と湯水のように……! うっとおしいですね!」
「きゃー! どんどん、どんどん増えてますー!」
舌打ちをするアーニャと、顔を青ざめさせつつも懸命に走るフローラ。二人と一緒に走りながら、マージェリーは絶賛混乱中であった。
(どうして魔獣がこの森に!? 小説にもこんなシーン無かったはずなのに!)
魔獣が生息するのは、瘴気が満ちる場所だけだ。王都周辺だと、城壁から馬車で一日離れた黒の森ぐらいしかない。瘴気もなく、かつ王家が管理するこの森に、魔獣が住んでいるなど聞いたこともない。