「失せろ。獣ども」

 それからは何が起こったのかわからなかった。突き出した彼の片腕から、黒い影のようなものが飛び出す。それは巨大なオオカミの頭となり、堕ちる魔獣たちを次々に喰らった。

(つ、つよい……)

 呆然と、マージェリーはその光景を眺める。黒いオオカミは舐めるようにすべての魔獣を一掃すると、霞のように消えた。

「もう大丈夫だ」

 最後の霞が風に溶けたとき、耳元で彼の声が響く。だが、答える気力は残っていなかった。

 彼の腕に抱かれたまま、次第に空が遠ざかっていく。彼の黒と自分の銀が空に舞うのを見たのを最後に、マージェリーの意識はぷつんと途切れたのだった。