非常識な娘だ。正直、第一印象はそれだった。

「お父さまにしかられます~っ。おねがいですから、家にだけはつれてかえらないでください~~~っ」

 馬車の向かいを占領し、ぐだぐだと半泣きになってくだを巻く娘。それを前にして、ユリウスはもう何度目かわからない溜息を吐いた。

 事の発端は、王立学院の中庭に倒れている彼女を見つけたこと。ほんの少しの情け心を出し、声を掛けたのが運の尽きだった。あれよあれよのうちに娘のペースに呑まれ、気が付けば彼女を馬車にのせ、家に向かってやっている。

 マージェリー・デュ・ノエル。それが、目の前の酔っ払いの名である。

(あの宰相の娘だからと安請け合いしたが、判断を誤ったな)

 いまだに「いえはだめです~~」「おとうさまにしかられる~~」とうねうねと訴えるマージェリーに、ユリウスは頬杖をついて顔をしかめた。