(だが、恨むからな……)
幸せそうな寝顔を、じとりと睨む。夢の中でもまた飲んでいるのか、「もう、のめましぇん」などと寝言を言っているのがさらに憎らしい。
「こいつめ。こいつめ」
ぷにぷにと頬をつつけば、マージェリーは「ふふっ」とくすぐったそうに身をよじった。それでも起きる気配はなく、だんだんとユリウスは毒気が抜かれてしまった。
まあ、いい。眠りこける想い人を見守りながら、彼は眉を下げる。
覚えていようが、覚えていまいが。彼女は決して逃がさない。茨が這うようにがんじがらめに結い留めて、必ず自分のものにしてくれる。
手始めに、明日の朝はせいぜい驚かせてやろう。大分衝撃を与えるかもしれないが、これも仕返しだ。なにせ彼女は、散々自分の心を搔き乱してくれたのだから。
それに言ったじゃないか。君も、私を好きなのだと。
免罪符のように口の中で転がしてから、彼もまた、ゆっくりと微睡みの中へと意識を手放したのだった。