昨晩のことをなかったことにしてくれ。
そのように、マージェリーが土下座をしたあと。
返ってきたのは、張り付くような沈黙。じわじわ伝わってくる不快の色に、マージェリーは頭を下げたまま首を傾げた。
(え、なに? なんで陛下は黙っているの??)
明らかにユリウスの機嫌が悪くなっていく。その理由がわからない。
ユリウスだって積極的に責任を取りたいわけじゃないだろう。なにせ彼とは、まともに会話したことすらないのだ。
そろりと顔を上げようとしたところで、ぐいと肩を引かれる。ぎょっとする彼女の頬を、大きな手がむにゅと掴んだ。
アヒルのように唇を尖らせ、マージェリーは目を白黒させる。王の奇行に戸惑っていると、ユリウスは絶対氷点下の壮絶な笑みで、ひくひくと唇の端を引きつらせた。