フリードが傷を庇いながら舌打ちをする。次の瞬間、大臣は血に濡れた手で何もない空間を撫でた。途端、そこにゆらゆらと揺れる黒い穴が出現する。

 背中から転がるように大臣が中へ逃れた途端、嘘のように穴は消えてしまった。

 目の前で起きた現象に、マージェリーは目を丸くした。

「だ、大臣はどこに!?」

「転移魔法の一種だ。魔力痕を追えば、すぐに見つけられる」

 淡々と答えて、ユリウスが踵を返す。

 こちらに向けられた顔に、マージェリーはぎょっとした。彼の赤い瞳からは、ごっそりと光が抜け落ちていた。まるで怒りと憎しみのあまり、すべての感情が凍り付いてしまったような。

「ユーリ、様……」

 マージェリーは言葉を無くした。