オオカミ王として膨大な魔力を持っているユリウスだ。このまま魔力暴走を起こせば彼の身が危うい。頼みの綱は聖女の目覚めだが、遅くなってしまえば小説と同じだ。彼の命を救うのには間に合わない。

(そもそも聖女は現れるの?)

 恐ろしい考えに、体が震える。

 小説で聖女に目覚めたのはフローラだ。だが、ユリウスを取り巻く環境も魔力暴走に至った経緯も、何もかもが小説と違いすぎる。それに『魂の番』と評したフリードの説が正しいとしたら、今のフローラとユリウスにそこまでの絆はあるだろうか。

 もし、最後まで聖女が現れなかったら。

「……っ、あ、が……!」

 ユリウスの体の震えが大きくなった。煙のように魔力が噴き出し、黒い魔力の柱が立ち上る。

 彼の指が苦しげに宙を足掻く。思わず手を取りそうになったマージェリーを、ついにセルジュが引き離した。