扉の前に立った王は深く息を吸い込み、吐きだした。

(落ち着け、俺。平常心、平常心……)

 逸る気持ちと興奮と。うっかり気を抜けば、すぐに浮かれてしまいそうな予感がある。

 そんな彼が身に纏うのは、式典用の白い衣装。これまでオオカミ王のシンボルである黒を基調とした服を着ることがほとんどだったから、ちょっとばかしそわそわしてしまう。けれども、彼女が喜んでくれることを思えば、この服も悪くない。

 こほんと小さく、咳ばらいをひとつ。それから彼は、扉をノックした。

「どちら様でしょうか?」

「私だ。ユリウスだ」

 ユリウスが答えると、一拍間をおいてキイと静かに扉が開く。愛しい彼女を待ちわびる王が背筋を伸ばした時――ひゅん、と。風を切る音とともに、ナイフが数本、扉の中から跳びだした!