ユリウス・ルイ・ルグラン国王はその日、朝から上機嫌だった。

 冷徹なまでに整った顔で冷ややかにすべてを見下ろし、誰をも寄せ付けない孤高の狼王。そんな彼の周りが、今日はどこか柔らかく感じられる。そのため彼の美しさが一層華やぎ、城勤めの女たちを人知れずドキドキさせていた。

 そんな王の執務室に、ひとりの男が訪れる。

「彼女が参りました」

「そうか」

 宰相ジョルダン・デュ・ノエルの呼びかけに応じ、ユリウスは書き物の手を止める。いそいそと羽ペンをあるべき場所に戻し、王は速やかに立ち上がった。

「淑女を長らく待たせるのは男の恥だな。すぐに向かおう」

 けれどもジョルダンは動かない。珍しくもの言いたげな顔をしてこちらを見ている。

「なんだ? 申してみよ」

「では、恐れながら」

 壮年の紳士は恭しく首を垂れる。だが次の瞬間、かちゃりとモノクルの飾りを揺らして顔を上げた彼は、勢いよく中指を立てた。