「娘を泣かせたら、ただで済むと思うなよ。あらゆる手を尽くして、あなたを王位から引きずり下ろしますから」

「それは反逆予告か?」

「場合によっては」

 モノクルの奥で鋭く目を光らせる宰相を、ユリウスはじっと見つめる。ややあって、彼はふっと笑みを漏らした。

「かまわない。頭の隅に留めておこう」

「ありがたき幸せ」

 先ほどと同じく、ジョルダンは恭しく胸に手を当てる。

 彫が深い顔立ちにモノクルが似合う壮年のこの男を、ユリウスはそこそこ買っている。ユリウス個人をどう思っているのかは知らないが、仕事には忠実な男だ。

 おそらく彼は、『王』ではなくて『国家』に仕えている。ある意味危険な人物だが、却って、宰相のそういったドライな部分が楽だった。

 一方で、ジョルダンは愛妻家で子煩悩だ。特に妻に瓜二つである娘への溺愛ぶりはすさまじく、滅多に仕事以外の話をしないユリウス相手の会話ですら、時々名前を聞くほどだ。

 まさかその娘のことで、宰相に詰め寄られる日がこようとは。王はそのように感慨にふける。