聖ルグラン王国、王城。ロワーレ城。ロワーレ川を渡った先にある、要塞としての機能も兼ね備えたこの城には、一方で見事な庭園がある。

緑の芝が整えられたそこには一年中何かしらの花が咲き、さらには眼前には豊かな渓谷を望むことが出来る。

 その最奥にある、渓谷と庭園の両方を見渡せる、眺めのいいテラス。諸外国の要人をも唸らせる見事な光景を前にしておきながら、マージェリーは手放しに喜ぶことは出来なかった。

 原因はもちろん、目の前で微笑むこの男。

「ゆっくり話せればと思っていたんだが、君も同じ考えでよかった」

 ティーカップを手に、上機嫌にうそぶくユリウス王。二人きりになった途端、オオカミ耳と尻尾の生えた獣人姿になっている。彼曰く、そっちの姿が本来の姿で、気を張らずに楽だという。

 絶景の中で優雅に茶を嗜む姿が、絵にならないわけがない。しかも、前世でどきゅんと胸を射抜かれたワンコ耳スタイルである。本人は無自覚なのだろうが、そんなところも小憎らしい。