母の不用意な発言に、慌ててマージェリーは声を張り上げる。けれども時すでに遅し。「お、お嫁に出る……?」と、父はますます悲壮感を強めている。

 兄がやれやれと肩を竦めた。

「寂しいもなにも、父上が一番マージェリーに会いやすいでしょう。立場上、城内どこでも自由に動き回れるんですから」

 呆れた顔で突っ込みを入れる、長男のエディ。面倒見がよく、マージェリーもとても可愛がってくれている。彼も城勤めの文官のため、たまには会えるだろう。マージェリーにとってはありがたい限りだ。

「冗談抜きに、ひとりでままならない事があったら連絡をするんだよ。あと、なんでもアーニャを頼ること。そのために、彼女も城に上げることにしたんだから」

 ちらりと向けられた視線を受けて、アーニャが軽く頭を下げる。

 彼女の同行を決めたのは父だ。もちろん侍女兼用心棒として。「間者などが城に潜り込んだら大変だからね」などと父は言っていたが、本当は誰に向けての『用心棒』なのかは、今更言うまでもないだろう。