「でもね、嬉しいんだ。兄上がこんな風に気にかけてくださったのは初めてだから。素直に感謝を伝えられたらいいんだけど……一度拗れてしまうと難しいね」

 複雑な思いで、マージェリーは見つめた。

 ユリウスがマージェリーを呼び寄せたのは、純粋にマージェリーを城に置くため。弟とその婚約者のためというのは、十中八九建前だ。

 けれども、どんな理由であれ、ユリウスのしたことでセルジュが喜んでいるのも、また事実。それをユリウスが知らないというのは、ひどくもったいない気がした。

〝私には信じられる友も、信じてくれる友もいない。セルジュとは違う〟

 小説のユリウスのセリフがふいに頭に蘇る。

(……さっさと仲直りをしてしまえばいいのに)

 小説を読んでいたからこそわかる。二人の兄弟に横たわる溝は簡単なものではない。

 それでもマージェリーは、一抹のもどかしさを感じずにはいられなかった。