「なーんか。もやもやするのよね」
窓の外を眺めながらマージェリーは呟いた。
彼女が今いるのは、ロワーレ城に用意された私室だ。ノエル家の屋敷よりは少し狭いが、前世の感覚からすると十分すぎる広さである。
ちなみにアーニャは席を外している。城内のことを教わるために、城が用意してくれた侍女たちとあちこちを巡っているのだ。
だから、これは完全なる独り言。気兼ねなく鬱々とした思いを吐き出すことができる。
――ユリウスとセルジュ。小説の中で、彼ら兄弟は悲しい結末を迎える。
この世界でも周知されているように、ユリウスは太后の子ではない。彼の母は、城の下働きの侍女である。