それから程なくしてーー…
『桜を見に行かないか?月曜なら休みだろ?』
行く!と、返事をした約束の月曜日。
私のアパート近くまで迎えに来てくれるという渉に甘えて。
その待ち合わせ場所のコンビニで待っていると、一台のバイクが目の前に停まった。
もう誰かわかるよ!
「お待たせ。だいぶ待った?」
ヘルメットを外して、前髪を掻き上げた渉。
今……来た所だよ、って答えると。
後ろに乗るだろ?
バイクを降りて、ヘルメットを取り出して渡してくれた渉に、もちろん、と受け取って。
「10年ぶりだよね、渉の後ろに乗るの」
「そうだな。しっかり捕まってろよ?」
うん!と、頷いて。
バイクに跨がった渉の背中に、私もバイクに跨がって頬をくっつけて。
腰に腕を回す。
高校でバイクの免許を取った渉の後ろに乗って、よく海岸線を走ってた。
肌を擽る潮風が気持ちよくて、背中から伝わる渉の鼓動も温もりも心地好かった。
心地よさは、今も同じだね。
堪らずに腰に回す腕に力を込めて、背中に頬を擦り寄せていて。
「怖い?」
渉に、信号待ちでそう訊かれてしまって……
怖くないよ!
渉の背中にくっついてるの好きだなって。
素直に口にしたのは、今の紅いだろう顔は渉には見えないから。
そうか、と渉がちょっと照れたのが声の感じでわかったよ。
今度はさ、海に行こうな?
行きたい!渉と潮風を感じたい!
ああ、適度に飛ばして思う存分……感じさせてやる。
楽しみにしてる!