《高山 柚羽》
DJのSHOHEY。
ファンになるきっかけは、たまたまマネージャーの車で聴いたラジオだった。
声だけで惚れてしまうような、低くて渋い声。
イベントなどのDJもしてるなら、とクラブにもイベントにも、行ける時は足を運んだ。
はじめて、SHOHEYさんの容姿を見た時は。
声とは似つかわしくない、やや童顔で。
そのギャップに、くらくらした。
だからー…恋愛感情とかではなく、SHOHEYさんともっと仲良くなりたかっただけ。
その先に、SHOHEYさんと仲良しなんだよって。
他のSHOHEYさんファンのモデル仲間に自慢したかっただけ。
それだけなのに………
「フラれちゃったよ……彼女を心から大好きなんだって」
兄にヘアメイクをしてもらいながら、さっきのやり取りを話してみると。
可哀想に。
柚羽は俺にどうしてほしい?
兄とSHOHEYさんの彼女は、同じ美容院で働いているんだよね。
だったらさ、彼女がお兄ちゃんに靡けば私にもチャンスはあるかも。
「悪い子だね。自慢したいだけのくせに。簡単には、伊織ちゃんは揺らがないと思うけど……可愛い子だから、やってみるよ」
兄は、私には甘い。
叶えられそうな願いなら、何でも叶えてくれる。
だって、シングルマザーだった母親はー…私と兄を残して、自ら命を絶って。
肩身の狭い思いをして、親戚の家で兄が高校を卒業するまで。
寄り添って生きてきたんだから。